英語で情報を取る:英​国政府の勧告、恥の殿​堂、米国ジャーナリス​ト [久松 20110322]

浅見さん、綾部さん、西中さん、須賀さん、丹羽さん:
<関心がありそうな人には転送してもかまいません>
<不要なら、久松に送るな、と言ってください>
<暇な時に読んで頂ければ幸いです>

本日も短い三題話+おまけです。三題は、
1)英国政府の勧告変更内容を説明する大使館主催の電話会議
(3月18日 16時)、
2)Journalist Wall of Shame、そして、
3)VOAのSteve Hermanに見るジャーナリストの仕事のしかた、
です。

さて、この一週間は福島第一原子力発電所事故が津波災害を
上回るインパクトを与えました。多くの海外メディアで大きく取り上げられ、
センセーショナルな記事も多く見られ、多くの外国人が日本を出発する
こととなっています。東洋大学の国際学生宿舎(I-house)からも
多くの人が本国に引き揚げたと思います。
私の知人でも、家族と一緒に出発された方もいます。

これには、海外メディアの取り上げ方だけではなく、日本政府、なかでも
官邸、原子力安全・保安院東京電力の情報の出し方の不手際にも
あります。官邸では枝野官房長官が文字通り不眠不休で精一杯
勤めていらっしゃいますが、重要なのは「信頼にたる専門家の情報提供」です。
この点、原子力安全・保安院の記者会見はお世辞にも単位を上げられる
ものではなく、東京電力の記者会見も当初はお粗末なものでした。
こういう意味でのpublic relationsが不十分なことを、
「ニコニコ生中継」は明らかにしたと思います(流れるコメント群も
あれはあれで、なんとかしたいのですが)。

1)英国政府の勧告変更内容を説明する大使館主催の電話会議(3月18日 16時)、
 英国政府はChief Science Officerを電話で招いて、
日本の原子力事故のインパクトに関する電話会議を開きました。
https://www.bccjapan.com/asp/general.asp?contentid=108

英国政府の旅行勧告は、"consider leaving Japan"です。
これは、"leave Japan"ではありません。この背景を説明しています。
日本語訳は私は読んでいませんが、抄訳はこちらにあります。
http://d.hatena.ne.jp/trailblazing/20110319/1300486837
でも、自分で英語を読んだほうがいいですよ。

白眉なのは、質問で『Why is the French giving different advice? 』
と尋ねられた時の答えです。これは凄いです。皆さんも笑ってください。

2)Journalist Wall of Shame、
 先にも書きましたが、海外メディアのセンセーショナルな取り上げ方には
日本人だけではなく外国人もかなり不満をもっています。
あえて『なぜ私は日本を逃げ出さないか』という小文をWashington Postに
掲載するアメリカ人ジャーナリストもいるくらいです。
"Why I’m not fleeing Japan" By Paul Blustein,
http://www.washingtonpost.com/opinions/why-im-not-fleeing-japan/2011/03/16/ABQsdhk_story.html?fb_ref=NetworkNews

今、笑ってしまったのは米国最大のケーブルニュースであるFox Newsが
日本の原子力発電所の一つとして、『渋谷エッグマン』というコンサート会場を
地図に載せてしまったという話です。
http://mediamatters.org/blog/201103140036

さて、どんなにジャーナリストがセンセーショナルな記事を書いているのかを
記録したサイトもあります。それが、Journalist Wall of Shameです。
ご存知のようにHall of Fameというのが、日本語では殿堂と訳されるもので、
これをもじって、Wall of Shameとなっています。韻を踏んでいるわけですね。
http://jpquake.wikispaces.com/Journalist+Wall+of+Shame

ある意味、ジャナーナリストがやっちゃいけないこと集になっています。
この中で私が覚えているのは、Kyodo Newsが配信した
"Traces of radioactive iodine found in tap water in Tokyo, other areas"
です。これは以下のように評価されて10点評価で4点ついてます。
(点が高いほど悪い)

  • headline may unnecessary cause fear and panic over something already

deemed not a health risk.
嘘ではないが、報道方法が悪いと言うことですね。

3)VOAのSteve Hermanに見るジャーナリストの仕事のしかた、
 但し、欧米メディアを読むにあたって、注意しなければならないことは
彼らは個人で責任を取るということです。つまり、上記のWall of Shameには
ほとんど記事を書いた記者名が書いてあります。この点、署名記事の少ない
日本の新聞・メディアは責任の取り方が、会社しかないということになります。

これは仕事のやり方にも関わります。日本の新聞記者は、自分の原稿を
本社のデスク(と呼ばれる担当)に送り、デスクが取捨選択し、ある場合は
大きく改稿すると言われています。これは記事を書けるプロを雇う欧米メディアと
異なり、日本の新聞・メディアは「記事を書けそうな素人」を雇うからです。
ですので、記事を書けるようになるまでに仕込む必要があります。
そういうこともあって、より集団として記事を書くのかもしれません。

では、欧米メディアのジャーナリストはどういう仕事をしているのでしょうか。
私がたまたまTwitterでfollowしているSteve Hermanの例を見てみましょう。
彼はVOAつまりVoice of Americaで働いています。駐在は韓国のソウルの
ようですが、韓国と日本をカバーしているようです。現在は東京で仕事を
して、何本も震災関係の記事を書いています。
例えば、これです。
http://www.voanews.com/english/news/Japan-Finds-Spinach-Milk-Contaminated-with-Radiation-118291534.html

彼は日本語は結構できるようですが、
さすがに取材過程で出てきた春菊が何かはよくわからないので
twitterで尋ねています。しかし、それは記事には使いません。
つまり、一つの記事を書くのに、使えるかもしれないより多くの材料を集めて、
そこから取捨選択して書いていくというスタイルなのです。
そして記事を書いた瞬間から、webに掲載されていくということになります。

では、それができるようになる訓練はどうすればいいのでしょうか。
米国の学生はよく学生新聞で鍛えているようです。
しかし、最近はどのくらいブログを書けるかということでも評価されるのだろうと
思います。もし万一、マスメディアを視野に入れる方がいたら、
自分のブログで、きっちりとした記事を書く習慣をつけるとよいですよ。
ちゃんとした記事を書けるという証明になります。

さて、最後におまけ。
かなり辛い映像に耐えられる人であれば、
CBS 60 minutesの"Disaster in Japan"を見てもいいです。
米国のquality journalismの代表です。
私の知る限り、日本では放映されない映像が二種類あります。
被災に対する考えから、見ないのも権利です。
これは、米国ではCBSテレビで全国放送される番組です。
http://www.cbsnews.com/video/watch/?id=7360240n&tag=related;photovideo

では。

久松