英語で情報を取る: 震災被害、原発事故、震災費用推計[久松 20110329]

浅見さん、綾部さん、西中さん、須賀さん、丹羽さん:
<関心がありそうな人には転送してもかまいません>
<不要なら、久松に送るな、と言ってください>
<暇な時に読んで頂ければ幸いです>

今回が最終回です。いつか感想ください。無駄っぽかったら
来年は別の趣向を考えます。
次の手は考えればいくらでも出るはずなので。

本日の三題話は、
1)震災災害についてFTのレポート、
(いつか英語で喋るときの素材)
2)原子力発電所事故についてのNewYork Review of Booksのレポート、
(限られた情報から想像する訓練)
3)世界銀行による震災被害の当初の推計
(タイミングよく推計して、人々の関心を高める)

1)震災災害についてFTのレポート、
日本に特派員として滞在していたDavid Pillingがリポートしています。
March 25 2011の記事です。読みたくないかもしれませんが、その場合は
キープだけしておいてください。ひょっとすると、震災について
君が何か英語で話さなければならないときに、
どういう英語を使わなければならないか参考になるでしょう。

2)原子力発電所事故についてのNewYork Review of Booksのレポート、
これも読みたくないかもしれません。
"Japan’s Radiation Scare: The Good News and the Bad"
という記事です。
http://www.nybooks.com/blogs/nyrblog/2011/mar/25/japans-radiation-scare-good-news-and-bad/?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+nybooks+%28The+New+York+Review+of+Books%29&utm_content=Google+Reader

英米にはScience Writerという専門職があって、科学について
わかりやすく一般人(the public)に伝える仕事を、マスコミや本出版を
通じて行っています。雑誌では、National Geographicで書いたりしています。
この記事もそういう作品です。

この記事からわかることは、原子炉での損傷とそこからの漏えいは
ほぼ予想された事態だと言うことです。そういう意味では、
serious conditionは変わりませんが、本当に予想外のことは
起きていないのかもしれません。もっとも心配されたことは
格納容器も圧力容器も無い「使用済み燃料」の爆発だったのですが、
それはこれまで回避できています。

3)世界銀行による震災被害の当初の推計
http://siteresources.worldbank.org/INTEAPHALFYEARLYUPDATE/Resources/550192-1300567391916/EAP_Update_March2011_japan.pdf

神戸大震災と比べて推計されています。GDPの2.5〜4%の規模だということは
覚えておいてもいいかもしれません。

なお、おまけ話です。
神戸大震災の経験はいろんな意味で有効に活用されることでしょう。
例えば、心の問題についてもそうです。
東北関東大震災下で働く医療関係者の皆様へ――阪神大震災のとき精神科医は何を考え、どのように行動したか』
http://homepage2.nifty.com/jyuseiran/shin/

以上全てのリソースは、私のブログで引いてあります。
http://cocolog-yoshi.cocolog-nifty.com/blog/

もし万一、これまでの「英語で情報をとる」に何か関心をもってくださったら、
お暇な時に私のブログを見て、そのリンクを読んでください。
もしくは、RSSリーダーで私のブログを登録してくださいね。
では、お邪魔しました。

ではでは、いろいろお疲れ様。

久松

英語で情報を取る:英​国政府の勧告、恥の殿​堂、米国ジャーナリス​ト [久松 20110322]

浅見さん、綾部さん、西中さん、須賀さん、丹羽さん:
<関心がありそうな人には転送してもかまいません>
<不要なら、久松に送るな、と言ってください>
<暇な時に読んで頂ければ幸いです>

本日も短い三題話+おまけです。三題は、
1)英国政府の勧告変更内容を説明する大使館主催の電話会議
(3月18日 16時)、
2)Journalist Wall of Shame、そして、
3)VOAのSteve Hermanに見るジャーナリストの仕事のしかた、
です。

さて、この一週間は福島第一原子力発電所事故が津波災害を
上回るインパクトを与えました。多くの海外メディアで大きく取り上げられ、
センセーショナルな記事も多く見られ、多くの外国人が日本を出発する
こととなっています。東洋大学の国際学生宿舎(I-house)からも
多くの人が本国に引き揚げたと思います。
私の知人でも、家族と一緒に出発された方もいます。

これには、海外メディアの取り上げ方だけではなく、日本政府、なかでも
官邸、原子力安全・保安院東京電力の情報の出し方の不手際にも
あります。官邸では枝野官房長官が文字通り不眠不休で精一杯
勤めていらっしゃいますが、重要なのは「信頼にたる専門家の情報提供」です。
この点、原子力安全・保安院の記者会見はお世辞にも単位を上げられる
ものではなく、東京電力の記者会見も当初はお粗末なものでした。
こういう意味でのpublic relationsが不十分なことを、
「ニコニコ生中継」は明らかにしたと思います(流れるコメント群も
あれはあれで、なんとかしたいのですが)。

1)英国政府の勧告変更内容を説明する大使館主催の電話会議(3月18日 16時)、
 英国政府はChief Science Officerを電話で招いて、
日本の原子力事故のインパクトに関する電話会議を開きました。
https://www.bccjapan.com/asp/general.asp?contentid=108

英国政府の旅行勧告は、"consider leaving Japan"です。
これは、"leave Japan"ではありません。この背景を説明しています。
日本語訳は私は読んでいませんが、抄訳はこちらにあります。
http://d.hatena.ne.jp/trailblazing/20110319/1300486837
でも、自分で英語を読んだほうがいいですよ。

白眉なのは、質問で『Why is the French giving different advice? 』
と尋ねられた時の答えです。これは凄いです。皆さんも笑ってください。

2)Journalist Wall of Shame、
 先にも書きましたが、海外メディアのセンセーショナルな取り上げ方には
日本人だけではなく外国人もかなり不満をもっています。
あえて『なぜ私は日本を逃げ出さないか』という小文をWashington Postに
掲載するアメリカ人ジャーナリストもいるくらいです。
"Why I’m not fleeing Japan" By Paul Blustein,
http://www.washingtonpost.com/opinions/why-im-not-fleeing-japan/2011/03/16/ABQsdhk_story.html?fb_ref=NetworkNews

今、笑ってしまったのは米国最大のケーブルニュースであるFox Newsが
日本の原子力発電所の一つとして、『渋谷エッグマン』というコンサート会場を
地図に載せてしまったという話です。
http://mediamatters.org/blog/201103140036

さて、どんなにジャーナリストがセンセーショナルな記事を書いているのかを
記録したサイトもあります。それが、Journalist Wall of Shameです。
ご存知のようにHall of Fameというのが、日本語では殿堂と訳されるもので、
これをもじって、Wall of Shameとなっています。韻を踏んでいるわけですね。
http://jpquake.wikispaces.com/Journalist+Wall+of+Shame

ある意味、ジャナーナリストがやっちゃいけないこと集になっています。
この中で私が覚えているのは、Kyodo Newsが配信した
"Traces of radioactive iodine found in tap water in Tokyo, other areas"
です。これは以下のように評価されて10点評価で4点ついてます。
(点が高いほど悪い)

  • headline may unnecessary cause fear and panic over something already

deemed not a health risk.
嘘ではないが、報道方法が悪いと言うことですね。

3)VOAのSteve Hermanに見るジャーナリストの仕事のしかた、
 但し、欧米メディアを読むにあたって、注意しなければならないことは
彼らは個人で責任を取るということです。つまり、上記のWall of Shameには
ほとんど記事を書いた記者名が書いてあります。この点、署名記事の少ない
日本の新聞・メディアは責任の取り方が、会社しかないということになります。

これは仕事のやり方にも関わります。日本の新聞記者は、自分の原稿を
本社のデスク(と呼ばれる担当)に送り、デスクが取捨選択し、ある場合は
大きく改稿すると言われています。これは記事を書けるプロを雇う欧米メディアと
異なり、日本の新聞・メディアは「記事を書けそうな素人」を雇うからです。
ですので、記事を書けるようになるまでに仕込む必要があります。
そういうこともあって、より集団として記事を書くのかもしれません。

では、欧米メディアのジャーナリストはどういう仕事をしているのでしょうか。
私がたまたまTwitterでfollowしているSteve Hermanの例を見てみましょう。
彼はVOAつまりVoice of Americaで働いています。駐在は韓国のソウルの
ようですが、韓国と日本をカバーしているようです。現在は東京で仕事を
して、何本も震災関係の記事を書いています。
例えば、これです。
http://www.voanews.com/english/news/Japan-Finds-Spinach-Milk-Contaminated-with-Radiation-118291534.html

彼は日本語は結構できるようですが、
さすがに取材過程で出てきた春菊が何かはよくわからないので
twitterで尋ねています。しかし、それは記事には使いません。
つまり、一つの記事を書くのに、使えるかもしれないより多くの材料を集めて、
そこから取捨選択して書いていくというスタイルなのです。
そして記事を書いた瞬間から、webに掲載されていくということになります。

では、それができるようになる訓練はどうすればいいのでしょうか。
米国の学生はよく学生新聞で鍛えているようです。
しかし、最近はどのくらいブログを書けるかということでも評価されるのだろうと
思います。もし万一、マスメディアを視野に入れる方がいたら、
自分のブログで、きっちりとした記事を書く習慣をつけるとよいですよ。
ちゃんとした記事を書けるという証明になります。

さて、最後におまけ。
かなり辛い映像に耐えられる人であれば、
CBS 60 minutesの"Disaster in Japan"を見てもいいです。
米国のquality journalismの代表です。
私の知る限り、日本では放映されない映像が二種類あります。
被災に対する考えから、見ないのも権利です。
これは、米国ではCBSテレビで全国放送される番組です。
http://www.cbsnews.com/video/watch/?id=7360240n&tag=related;photovideo

では。

久松

英語で情報を取る:軽​水炉、日本で強奪が起​きない理由、不屈の日​本 [久松 20110315]

浅見さん、綾部さん、西中さん、須賀さん、丹羽さん:
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本日は短い三題話です。三題は、
1)軽水炉はなぜ市場を圧倒しているのか、
2)なぜ日本で強奪が起きないのか、そして、
3)不屈の日本、
です。

1)軽水炉はなぜ市場を圧倒しているのか、

みなさん、福島第一原発について心配されているでしょう。
これについては、以下のような「注意深く楽観的な」レポートがあります。
"Why I am not worried about Japan’s nuclear reactors."
http://mitnse.com/2011/03/13/why-i-am-not-worried-about-japans-nuclear-reactors/
これは今朝の第二号機の「爆発」以前の記事ですが、それでも
全体像を知るためには大事な記事だと思います。
そして、日本語の翻訳もありますが、若干、重要な箇所で間違っているようですので、
日本語を読みながら、特に数字に気をつけて英語本文を確認した
ほうがいいと思います。
http://bravenewclimate.files.wordpress.com/2011/03/fukushim_explained_japanese_translation.pdf

私が思うに、32代大統領であるJFK、つまりジョン・F・ケネディが、自分の就任演説で
言った言葉が今ほど当てはまる時はありません。
"So, first of all, let me assert my firm belief that the only thing we
have to fear is fear itself―
nameless, unreasoning, unjustified terror which paralyzes needed
efforts to convert retreat
into advance. "
覚えておいて良い部分は、the only thing we have to fear is fear itself です。
「恐れるべき唯一のものは恐れそのものだ」
でも、その後の部分もいいですね。

さて、本題です。福島第一原発軽水炉という型ですが、この種類の炉が
世界の原子炉でメジャーなのだそうです。しかし、必ずしも軽水炉がもっとも
優れているとは限らないのだそうです。では、なぜ市場を圧倒しているのか?
これは新技術についてときどきあることです。
前回紹介したタイラー・コーエンのポストではこれを説明した論文があるとのことです。
http://marginalrevolution.com/marginalrevolution/2011/03/nuclear-power-reactors-a-study-in-technological-lock-in.html

論文はこれです。
http://dimetic.dime-eu.org/dimetic_files/cowan1990.pdf
要は、技術が導入されるときに、強くプッシュされた技術の一様式が
市場を制圧してしまうという典型例だというのです。類似の例としては、
キーボードのキー配列、電流の交流電流、ガソリン・エンジンがあります。
こういうちょっと長めの時間軸で考えるのが経済史なんですね。


2)なぜ日本で「強奪」が起きないのか、
これは、ウィリアム・イースタリーのポストです。
http://aidwatchers.com/2011/03/why-no-looting-in-japan/
これは簡単なので、解説抜きです。
たぶん、我々にとっては、なぜ外国の人々がそんなに驚くのか
ということ自体が驚きですが、この驚きを大切にしたいと思います。


3)不屈の日本、
これはWall Street Journal (March 12, 2011)の社説です。
英語で読んでから、日本語で自分の理解をチェックしてください。
私が思うには、そうですね、英語版を5分ぐらいで斜め読みできれば
いいんじゃないかなと思います。そして、自分のコメントが出てくればいいんです。


今日はこんな感じです。今日は私は夕飯担当なので
得意のナポリタンを作ります。ではでは。

久松

英語で情報を取る:Lunch with the FT、中国人留学生、routine work [久松 20110308]

浅見さん、綾部さん、西中さん、須賀さん、丹羽さん:
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<不要なら、久松に送るな、と言ってください>
<暇な時に読んで頂ければ幸いです>

本日は三題話プラスおまけです。三題は、1)Lunch with the FT、
2)米国で勉強する中国人留学生、そして、3)routine workはコンピュータに
取って代わられる、です。おまけはAERAに掲載された私のコメントの
補足です。

最初は、英国ロンドンの金融新聞Financial Timesの週末コラム、
Lunch with the FTです。これは、FT記者が有名人と一緒に、有名人の
指定したレストランで昼食を食べて話をするという記事で、ある意味、
このコラムに呼ばれること自体が一つのステイタスかもしれません。

March 4, 2011はFT記者のJohn Gapperが
ショーン・パーカー氏と昼食を食べました。
では、なぜ昼食なのでしょうか。朝食でも夕食でもないのでしょうか。
これは、英米を中心とした習慣だと思いますが、ビジネス・ランチは
昼食が多いのです。これを英語ではPower lunchと言うことが
あります。Power dinnerなんて言う言い方は滅多にしません。
検索してみると、Power lunchの検索数は約442,000件、
これに対してPower dinnerは約49,200件です。

もちろん所変われば習慣変わるで、メキシコではPower lunchより
Power breakfastが普通でした。日本は接待という仕事飯は
夕飯ですし、仕事の飲み会も夕食ですよね。では、なぜ英米では
ビジネス飯は昼食なのでしょうか。私は正確なことは知りませんので、
推測で申し上げます。まず、大都市で朝食に集まるのは通勤も
あるので大変。ビジネス街で働いていれば昼食に集まるのはより便利。
夕食は家族や恋人や友人のために使うことが多い。
一つの目安ですが、
朝食は自分の一日のため、昼食は交友を広げるため、
夕食は交友を深めるため、と考えてもよいでしょう。

ということで、Lunch with the FTです。
ショーン・パーカーって誰でしょう。映画The Social Networkを
観た人なら、聞いたことあるって思っていただけるのではないでしょうか。
Justin Timberlakeが演じた役で、New Yorkのレストランで
四人のメニューを決めちゃった男です。わからなかったら
WikipediaJustin Timberlakeの写真を確認してみてください。

じゃぁ中身です。ちょっとファッショナブルなbusiness lunchの模様が
今回のショーン・パーカーとのLunch with the FTに書かれています。
英語表現として知っておいたほうがいいのは、
wonkという言葉です。パーカー氏を表すこんな表現に出てきます。
He is pale-faced and intense, with a mop of reddish-brown hair and a
beard, and talks as fast and rhetorically as a West Wing wonk.

手持ちの英英辞典を引いてみると
a person who works or studies too much
と出てきます。例文がいいです。
The president has been given so much different advice by the
Washington policy wonks that he's now incapable of dealing with the
current crisis in a swift and decisive manner.
この"policy wonk"という言葉は「政策マニア」とか「政策おたく」という語感だと思います。
wonkの形容詞はwonkishであり、これは口語で「専門家向きの」もしくは
「おたく向け」という感じですね。ちょっとpejorativeな語感があると思うので、
控え目に言う時に使えます。

West Wing wonkというのは、米国ワシントンDCのホワイトハウス西棟で
仕事をするpolicy wonkのことです。West Wingという言葉は米国の中でも
テレビ・シリーズWest Wing(邦題は「ホワイトハウス」)でよく知られるように
なりました。俳優ロブ・ロウが演じるサム、及びジョシュ、そしてトービーが
典型的なWest Wing wonk = policy wonkです。米国政治システムが知りたければ
「ホワイト・ハウス」は非常に勉強になりますから是非とも見てください。
私に理解不能な表現が山のようにありますが、筋は面白いです。
奥さんと私は最近Season 3を見ています(大昔Season1と2を見たのです)。

あと注目はwineでしょうか。Nebbiolo grapeという表現というのが出てきます。
これはネッビオロ種というワイン原料の葡萄の種類のことです。
wineは、よほど好きでないのなら銘柄や収穫年を覚える必要はありません。
寄り道ですが、ご自宅にワインセラーをお持ちの芦野先生は
たぶん銘柄と収穫年を覚えていると思います。
尋ねてみるといいですよ。

その代わり、ぶどうの種類と味を関連付けるといいです。例えば、
白ワイン用のブドウの種類だと、
シャルドネソーヴィニョン・ブラン、マスカット(モスカート)ぐらい
しか私は知りません。
赤ワインだといろいろあって、
カベルネ・ソーヴィニョン、グルナッシュ(ガルナッチャ)、
サンジョベーゼ、テンプラニーリョ、メルローぐらいが
多少は私がイメージできる赤ワイン用のブドウ種かしら。
もちろん、覆面テストなんて無理ですよ。

皆さんにお勧めするのは、ワインを飲んだ時に、
それがちょっと高そうな雰囲気で、かつ美味しかったら
ぶどうの種類を尋ねて、記憶しておくといいかもしれません。
万一、飲みたいワインかなんかある?ってきかれた時に、
「銘柄は知りませんけど、昔、サンジョベーゼ種のワインが
美味しいって思ったことあるんです」なんて言えます。

サンジョベーゼ種はイタリアのワインによく用いられる葡萄ですが、
たとえフランス・レストランでそういう発言をしたとしても、
デート相手の男の子が、ソムリエ役の店員に
『それじゃ、サンジョベーゼが好きな人にお勧めのワインって
何かありますか?』ってフォローしてくれますよ。
妄想デートでした。アハハ。

さて、次はJames FallowsのThe Atlantic(雑誌)のブログに
ゲスト出演した「上海で教育コンサルタントをしているLucia Pierceさん」の
ブログ・ポストです。
For Chinese Students in America, It's Hard to Make Friends
http://www.theatlantic.com/international/archive/2011/03/for-chinese-students-in-america-its-hard-to-make-friends/72075/

James Fallowsとという人は、『日本封じ込め』や『沈まない太陽』という
翻訳も出ている日本論を書いたアジア通の米国人記者ですが、
ここ10年ぐらいは中国に駐在したりして、現在は中国についての
本を書いています。彼は1970年代ジミー・カーター政権時代に、米国最年少の
スピーチ・ライターとして2年間ホワイト・ハウス西棟に勤務した経験を
持っています。その人のブログにゲストが書いた、中国人学生は
米国の大学で友達ができにくい、という記事です。
アジア人として括られやすい日本人にも多少はあてはまる記事です。

詳しくは読んでいただければいいので、一点だけ。じゃぁ、
友達をつくるためのアドバイスはというと、Pierceさん、
1)スポーツに詳しくなりましょう(例えばアメフトのルールね)、
2)文脈がわからなかったら質問しましょう。
と言ってます。私も賛成です。

本題最後は、Paul KrugmanのNYTコラムです。
Degrees and Dollars、直訳すると「大学学位とドル」、
http://www.nytimes.com/2011/03/07/opinion/07krugman.html?partner=rssnyt&emc=rss
もし万一読めなかったら、NYT購読は無料ですから、
サイン・アップして読んでください。
彼の質問は、大学を卒業してつく仕事は本当に儲かるのか、
という厳しい質問です。彼の答えはやや悲観的です。

ここで大事なのは、彼の結論を表面上で受け止めるのではなく
つまり記憶するのではなく、そのプロセス(論理)を自分でなぞる
/追ってみることです。これができるようになるのが大学での訓練です。
そして、この訓練を毎日することこそが、コンピュータ時代の21世紀でも
それなりに儲かる仕事につく一つの条件ではないかと私は
思ってます。ここを履き違えると、「大学は出たけれど」という
方向に自分を一歩進めてしまうことになるので注意してください。

彼のポイントは、
「コンピュータは規則に従ったルーティン・ワークが得意なので、
コンピュータに取って代わられる仕事は儲からなくなる」という
ことですね。大事な単語は、当然routineです。
habitual or fixed way of doing things
という意味です。

おまけです。雑誌AERAの3月14日号に「英語と就活」の
特集記事に私のコメントが載りました。
かなり「上から目線」の発言になっており、自分で反省しました。
取材を受けるときにどう振る舞えば良いか良い経験になりました。

久松

英語で情報を取る:経済ブロガー・エジプト解放広場のデザイン・中国の第12次5カ年計画 [久松 20110301]

浅見さん、綾部さん、西中さん、須賀さん、丹羽さん:
<関心がありそうな人には転送してもかまいません>
<不要なら、久松に送るな、と言ってください>
<暇な時に読んで頂ければ幸いです>

今日の三題話は、経済ブロガー・エジプト解放広場のデザイン・
中国の第12次5カ年計画です。

経済ブロガーというと、
日本では池田信夫のブログが有名ですが、私はほとんど読みません。
彼の高揚した書き方が私に馴染まないからです。それに代えて、
実名はわからないのですが、金融、特にファイナンスの素養が
高い「himaginaryの日記」はだいたい読みます。
http://d.hatena.ne.jp/himaginary/

是非ともご自分の好きな英語ブロガーを作って、その方々をブログを
RSSリーダーで設定して、自分で独自の情報網をつくってください。
前回申し上げたように、RSSリーダーの代表例としては、
Googlegmailを設定すると左上に「リーダー」が出てきますので
ここで設定すればよいということになります。なぜ、toyonetを
持っているのにgmailを設定したほうがいいかというと、toyonetは
卒業すると打ち切られるからです。メールアドレスは、自分の半永久的な
住所のようなものですから、ご自分のアドレスは確保したほうがいいわけです。
(私のniftyのメールアドレスは1985年から持ってます、ハハハ)

それでは、有名経済ブロガーを三人ほど紹介しましょう。
これらはみな私の「リーダー」に入ってます。
一人は、タイラー・コーエンです。彼は村上春樹の小説も読む、
極めて守備範囲の広いミクロの経済学者で、Marginal Revolutionという
ブログをアレックス・タバロック氏と共に書いています。
http://www.marginalrevolution.com/

彼の最近の『欧米知識人とカダフィ』というブログ・ポストは興味深いものでした。
http://www.marginalrevolution.com/marginalrevolution/2011/02/western-intellectuals-and-gadhafi.html
ロバート・パットナム先生が招かれてカダフィ大佐と会ったことがあるとのことです。

このロバート・パットナムという政治学の先生が昔書いた
『Making Democracy Work』、つまり「民主主義をうまく動かす」という
本(邦訳はなぜか『哲学する民主主義』という変な題です)は、今でも
民主主義の基盤を考える上で大事な本だと思います。
「社会(関係)資本」という概念を広めた本でもあります。

英語表現では、make A workという表現は、get B rightという
表現とともに覚えておきましょう。前者は、「Aをうまく動かす」と
言う意味、後者は「Bを正しくする」という意味です。後者の例は、
get price right「価格を正しいものとする」という言い方があります。
外部性もないのに、税金とか補助金をかけて価格に歪みを
もたせているのをやめることを指します。

次のブロガーは、グレゴリー・マンキューです。彼は共和党系の経済学者として
知られていて、G.W. Bush政権のCEA委員長を務めました。
私のミクロの教科書でご存じだと思います。この人の専門は、
マクロ経済学で、彼の書いた中級のマクロ経済学の教科書はとても有名です。
http://gregmankiw.blogspot.com/

彼がハーバード大学の1・2年に教えている経済学原理の教科書の半分が
我々が使っているミクロ経済学の教科書であり、私が授業で申し上げる
世界のどこでもこの教科書を使っているという実例になっています。
マンキューは共和党系の経済学者なので、しばしば民主党系の
クルーグマンとブログで噛みつきあいます。それを最初に上げた日本の
経済ブロガーであるhimaginary氏がコント調に仕上げています。
例えば、これです。
http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20100509/paul_and_greg_2010_5

マンキューの最近のブログでは、大学生による経済シンポジウムの
紹介が出ています。
http://gregmankiw.blogspot.com/2011/02/econ-conference-for-undergrads.html
http://carrollround.georgetown.edu/
彼が言うように、経済学の先生のシンポジウムは五万とありますが、
大学生のシンポジウムは珍しいです。

今日ご紹介する最後のブロガーは、ブラッドフォード・デ=ロングです。
かれは西海岸のUC Berkeleyのマクロ経済学・経済史の先生で、
歴史を良く知っているので、とても勉強になるブログです。
http://delong.typepad.com/sdj/
彼は民主党系の経済学者で、ポール・クルーグマンと立場が似ています。
私が最初に読み始めた経済ブログはデ=ロングだったと思います。
彼は書く量が膨大なので、今は9割ぐらいは読まずに、時々見るだけです。

最近ほとんど流し読みだったデ=ロングのポストで目に留まったのは
『都市建築と革命(Urban Architecture and Revolution)』というものでした。
http://delong.typepad.com/sdj/2011/02/urban-architecture-and-revolution.html
大学の同僚が、カイロの民衆蜂起・政権転覆の根城となったタハリール広場
ついて詳しいというのです。彼がリンクをはっている同僚のインタビューがこれです。
http://www.dwell.com/articles/design-and-history-of-tahrir-square.html

このインタビューはとても面白かったです。たとえば、ムバラク政権崩壊後、デモ隊たちが
広場を掃除したことが興味ぶかかったのですが、この先生も、こんなことは
初めてだと驚いてます。これも以前に申し上げた中産階級の蜂起だという
私の勝手な根拠なのです(公共の場の掃除は、景観外部性の内部化です
が、こんなことをするのは中産階級の証拠です)。

ということで、タハリール(解放)広場の話もしたので、残る話は一つです。
中国政府の第12次5カ年計画です。5カ年計画とは何かというと
Wikipediaで概観をつかんでください。
http://en.wikipedia.org/wiki/Five-Year_Plans_of_the_People%27s_Republic_of_China
今回の5カ年計画は、主席(大統領)の交代を控えていること、経済の方向性の
転換が予想されていること、世界経済の中での中国の位置が非常に重くなって
きたことももあって、注目されています。注目点は、これまでのような輸出中心の
経済発展戦略を続けるか、そして、経済が大きくなってきた今、目標の経済成長率を何%
ぐらいにおくかです。

日経でも2月27日朝刊に呉暁華のコメントを載せています。
28日にも記事がありました。
Project Syndicateでは、Stephen Roach氏のop-edを
載せています。彼はかなり楽観的です。Roach氏は長年
米国経済について弱気派として知られていたので、最近の
中国経済についての強気発言は非常に目立ちます。
http://www.project-syndicate.org/commentary/roach2/English
これにはpodcastもあります。
http://media.blubrry.com/ps/media.libsyn.com/media/ps/roach2.mp3

もう一つ、中国経済に関連してMichel Pettisのブログも紹介しましょう。
http://mpettis.com/2011/02/zaiteku-and-china%e2%80%99s-january-inflation/
彼は、証券会社の調査部門に元々勤めていて、今は北京(だっかかな?)で
金融の先生をしています。そういう意味では、理論・理論の人ではありません。

でも、面白い論点を出してくれるのでためになります。たとえば、上記のポストでは
現在、中国の企業預金が低下しているという事実が目を引きます。中国の銀行金利
低く、インフレ率が高いことを前提とすると、企業は貯蓄(=儲け)を銀行に預けず、
他の企業に貸し付けているのではないかというのが推測できます。
その構造は、日本の80年代の財テクに似ているというペティス氏の指摘も
もっともです。財テクバブル崩壊とともに崩れました。
中国の資金は不動産バブルを引き起こしていないでしょうか。

私の勝手な読みでは、中国は第12次5カ年計画で、
日本の「日本列島改造論」と「前川レポート」の課題を
同時に達成しようとしていると思います。この二つを知らなかったら
Wikipediaなどで簡単に見ておいてください。おじさんの常識です。

この課題をバブル崩壊なしに成し遂げるかが次の主席(大統領)の使命でしょう。
そうやって論点を自分で設定しておくと、ニュースがより面白くなるので
ないでしょうか。ではでは。

久松

英語で情報を取る:RSSリーダー、人口、若者[久松 2011022]

浅見さん、綾部さん、西中さん、須賀さん、丹羽さん:
<関心がありそうな人には転送してもかまいません>
<不要なら、久松に送るな、と言ってください>
<暇な時に読んで頂ければ幸いです>

どうも久松です。なんとなく火曜日にこのメールを配信する
ようになっています。学期が始まれば、あまりメールを書いている
時間もなくなるので、万一、私が採集した情報に関心があれば
ブログを見るようにしてください。
http://cocolog-yoshi.cocolog-nifty.com/

さて、一つインターネット・テクニックを解説しておきましょう。
いわゆる「RSSリーダー」といわれるウェッブ・サービスで、
登録したブログの新情報を自動的に採取してくれるページです。
たとえば、私はPaul Krugmanのブログや、Financial Timesの
Martin Wolfのコラムを登録してあります。こうしておくと、
RSSリーダー」をチェックするだけで、いろんなブログやサイトの
新情報がわかるということになります。

私は「RSSリーダー」として、Googleのリーダーを使っています。
皆さんはtoyo.jpのアドレスのほかに、gmailのアドレスを
持っているかと思いますが、持っていない人は持ってください。
(理由は、toyo.jpのアドレスは、卒業すると失効するからです)
これを取ると、リーダーも使えるようになります。gmailサイトの上の
ほうにリーダーという文字が出てきます。

この「RSSリーダー」というサービスは、『はてな』というネット・サービスでは
「アンテナ」というサービスになっています。つまり、世の中に
アンテナを立てておくというイメージです。これは大事なことですから
どうぞトライしてみてください。ある意味では、twitterでフォローするのと
似ていますが、140字をフォローするのと、ブログやコラムの長文に
付き合うのは似て非なる作業なので、そういうこともできるように
なっておいてください。

閑話休題(さて)、今日のお題は、「RSSリーダー、人口、そして若者」です。
RSSリーダーの話はもう済みました。次は人口話です。英語で言うと
demographyですが、ご存じだといいのですが、最近、政治経済と人口話
よくピックアップされています。「少子高齢化」の日本では、毎日のように
その経済との関係が新聞に取り上げられていますが、バブルとの関係や
経済成長との関係も話題になっています。

バブルとの関係では、「逆依存人口比率と経済」という
このブログ・ポストが参考になります。
http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20110202/this_time_may_truly_be_different
現在、中国の不動産バブルが懸念されていますが、グラフを見ると
実際バブルは存在し、ひょっとするとここ数年で崩壊するのではないか
という気になります。元発表は、日本銀行副総裁の西村清彦氏の学会講演
ですあり、英語の講演原稿が日銀サイトに掲載されています。
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2011/data/ko110111a.pdf

この他、人口と経済成長との関連で、知っておくべき用語は
「人口配当」、「人口ボーナス」、「人口オーナス」という三つ単語です。
英語では、demographic dividend, demographic bonus,
demographic onusという言葉に馴染んでおいてもらえると
よいと思います。なお、dividendという単語は、配当であり、
株を所有しているとその会社から支払われるお金のことです。
比喩として「peace dividend」(平和の配当)というような言い方も
するので頭に入れるべき単語です。久松ゼミはBusiness Economicsの
ゼミですので、そういう意味でもone of the must-remember wordsです。

もう一つ、人口についての最近の話題は、やはりエジプトそしてアラブ世界です。
若年人口が多く、そのため若年失業が多く、社会への不満が大きくなり、
今回の「民衆蜂起・政権転覆」に繋がったという解説です。
この点に関して、とてもinsightfulな(見通しの良い)コラムはFinancial Times (FT)の
コラムニストであるマーティン・ウルフ氏による
"Why the world's youth is in a revolting state of mind"
です。

私がハッとしたと思ったウルフ氏の見通しの良さは、最後から三段落目にあります。
日本を含めた先進国も、現在中東が体験している人口転換を経験した時期があり、
それは20世紀の中盤であり、この時期に先進国は若者を使って何をしたか、
それは戦争(例:第二次世界大戦)だと言うのです。
たしかに、戦争をするときに動員されるのは若者ですね。
まだリビアの状況があり、まだ色々状況は変化するのでわかりませんが、
現在の中東情勢は、戦争をしてしまった20世紀中盤の先進国より「賢明」だ
と言えるかもしれません。そういう歴史感覚を持てば、「民主主義の経験が
無い中近東諸国は今後あぶない」というよく見られる発言にかすかに
漂う「驕り(arrogance)」から自分を防ぐことができます。
こういう歴史を見据えた発言は、米国の識者よりも
英国を含めた欧州の識者から出てくることが多いので、参考になります。

もし万一、世界の経済発展と若者との関係を概観したいという人がいれば、
世界銀行『世界開発報告2007:経済開発と次世代』を図書館で
ブラウズすることをお勧めします。
http://www.ittosha.co.jp/isbn978-4-903532-06-6.html
英語版なら無料で読めます。
http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/EXTDEC/EXTRESEARCH/EXTWDRS/EXTWDR2007/0,,menuPK:1489865~pagePK:64167702~piPK:64167676~theSitePK:1489834,00.html

今回の中東、特にエジプトの状況は、人口だけでなく
通信技術(例:Facebook)、人口(若者)、群衆と権力、都市、宗教(例:イスラム)と
いろんなキーワードが出てきているので、極東の人間にとっては格好の思考実験になります。
もしできれば、いろいろ考えてみてください。

では。

久松

追伸:待っていたDani Rodrik著Globalization Paradoxが電子書籍
昨日配信されたので、読み始めました。世の中、便利になったものです。

英語で情報を取る:中​流階層、テロリズム、​エスペランザ・スポル​ディング [久松 20110215]

浅見さん、綾部さん、西中さん、須賀さん、丹羽さん:
<関心がありそうな人には転送してもかまいません>
<不要なら、久松に送るな、と言ってください>
<暇な時に読んで頂ければ幸いです>

どうも。「英語で情報をとる」です。春休み中は発信できますが、
おそらく学期に入ると、私のブログから、皆さん勝手に久松が
チェックした情報を見てもらおうと思ってます。
http://cocolog-yoshi.cocolog-nifty.com/

この一週間は、何と言ってもエジプトの民衆蜂起と政権崩壊でした。
皆さんにスペイン語が読めれば、2010ノーベル文学賞受賞者の
ペルーの作家、マリオ・バルガス・ジョサが書いた闊達なop-ed、
『自由とアラブ人』を読んで頂きたいのですが、それはまた将来。
http://www.elpais.com/articulo/opinion/libertad/arabes/elpepiopi/20110213elpepiopi_13/Tes
(フランス語が出来る人なら感じはわかるかもしれないのでリンクを貼ります)

では、英語に戻って、今回の民衆蜂起・政権崩壊において、
活躍したのが「中流階層」ということに注目しましょう。
中産階級とか、中流階級とか言いますが、要はmiddle classです。
middle classという言葉は、やや欧州と米国で語感が違います。
というより、元々、欧州の言葉だと思ってください。もちろん、政治学
社会学では重要な概念で、それはそれとして米国でも使います。

手元にある三つの英英辞典を引いてみました。
the social class to which people belong who are neither
very wealthy nor workers with their hands
(Longman Dictionary of American English)

the people in a society who are not of high social
rank or extremely rich but are not poor. They
expect to be able to have a good job and/or a
college education
(Cambridge International Dictionary of English)

social class between upper and lower, including
professional and business people
(The Oxford Dictionary of Current English)

英英辞典を使ってくださいね。私は高校大学はLongman
使っていました。自分の好きな辞書ならなんでもいいです。それはそうと、
それぞれの辞書で言葉が違うのが面白いですね。エジプトの民衆蜂起では、
こんな人が活躍していたことを書いていたブログがありました。

Around me were many people I knew―writers, doctors, researchers,
filmmakers―among the many more I didn’t, but who still smiled in
mutual recognition of the revolt we had taken part in for the past
eighteen days.
http://www.nybooks.com/blogs/nyrblog/2011/feb/12/freedom/

作家、医者、研究者、映画作家、これらはprofessionalであり、good jobであり
その多くは大学教育を受けているでしょう。エジプトの高校進学率が28%(2008年)で
あることを考えると、社会の中の上層とは言えなくても、下層とは呼べない人々が
多数参加していることが想像できます。もちろん、労働者の参加もあったでしょう。
それでも、今回の民衆蜂起の主役は「中流階層」であると私は考えます。
(高校進学率データは世界銀行のWorld Development Indicatorsから
とりました。世の中は随分、データ参照が楽になったものです。)
http://data.worldbank.org/data-catalog

business peopleと言う言葉に困惑した人もいるかもしれません。
しかし、今回の民衆蜂起のきっかけとなったFacebookのページを
作ったWael Ghonim氏はGoogle Executiveだそうです。
つまり、business peopleと言ってもいいでしょう。
ちなみに、彼のTwitterはこれです。
http://twitter.com/Ghonim

もし万一、社会階層と政治との関係を知りたい人がいれば、
今田高俊『社会階層と政治』(東京大学出版会、1989年)
という本があります。古い本ですが、やや難しいかも。
こういうのを図書館でbrowseするというのが大事な能力です。
米国を代表する哲学者・心理学者と言われているWilliam Jamesが
こう言っているそうです。
『The art of being wise is the art of knowing what to overlook.』
全ての本を最初から最後まで全部読んではいけません。
<研究室で、学生から『先生、この本は全て読んだんですか?』と
聞かれると、いつもこう思います。>

さて、私のちょっとした関心は、このような中東の民衆蜂起・政権転覆が
民主主義をもたらす方向で動いていくとすると、中東の方々が起こす
テロリズムにどのような影響があるかということです。私は国内テロが
やや減る方向に行くのではないかと推測しています。それは、以前に
アラン・クルーガー『テロリストの経済学』(東洋経済新報社、2008年)
を読んだからです。ここには、貧困はテロリズムの土壌ではないと議論されています。
では、テロリズムの土壌は何かと言うと、中流層への自由の途絶だと
推定されています。すなわち、より中間層が自由になれば、
国内テロは下がることが予想されます。いつか覚えていれば、
こちらのサイトを使って、チェックしてみようと思います。
http://www.nctc.gov/wits/witsnextgen.html

では、国際テロはどうでしょうか。これについてもアラン・クルーガーが最近、
研究を発表しています。データをとって、見てみたということです。
Podcastでインタビューに答え、そしてtranscripもあります。
http://www.sciencemag.org/content/325/5947/1534/suppl/DC2
http://www.sciencemag.org/content/suppl/2009/09/17/325.5947.1566-b.DC1/SciencePodcast_090918.pdf

最後です。2月13日に米国音楽の最大イベント、グラミー賞がありました。
私は、Best New Artistに選ばれたEsperanza Spaldingという
ベーシスト兼歌手を知りました。素晴らしい繊細さですね。
今日は彼女が歌ったPonta de Areiaというミルトン・ナシミエントという
ブラジル人シンガーのカバー曲を10数回聞いてますが、たいしたものです。
でも、これだけ才能があった彼女でも、もう音楽はやめて政治学でも
学ぼうと思った時があったそうです。その時に何があったかという
インタビューがありました(伝 Wikipedia)。

Q: Then it was off to Portland University and the Berklee College of
music, where you “aced” the audition and received a scholarship. Tell
me about your “defining moment” with (guitarist) Pat Metheny.

A: Hilarious. I don't know if he even remembers the conversation! For
him it was so nonchalant and for me it was so huge! I was just talking
to a friend about this. When you're looking for an answer the tiniest
thing becomes the most significant thing. Anyway, the conversation
took place at Berklee when Gary Burton and Pat Metheny were producing
a record by the student ensemble. Everybody had left the studio and I
was there, probably practicing and Mr. Metheny walked in and asked me
what I was planning to do with my life. I told him that I was thinking
of leaving school and pursuing a degree in political science. He told
me that he meets a lot of musicians, some great, some not so great and
that I had (what he called) the “X Factor.” Meaning, that if I chose
to pursue a career in music and I applied myself, my potential was
unlimited.

Q: How did that make you feel?

A: Mind you, he didn’t say I was “great.” He said if I worked hard I
could make it, which is what it’s all about. Any creative pursuit is a
lifelong process.

ということで、新しい歌手を知った2月15日でした。
皆さんにも毎日「新しい発見」がありますように。では。

久松