英語で情報を取る:経済ブロガー・エジプト解放広場のデザイン・中国の第12次5カ年計画 [久松 20110301]

浅見さん、綾部さん、西中さん、須賀さん、丹羽さん:
<関心がありそうな人には転送してもかまいません>
<不要なら、久松に送るな、と言ってください>
<暇な時に読んで頂ければ幸いです>

今日の三題話は、経済ブロガー・エジプト解放広場のデザイン・
中国の第12次5カ年計画です。

経済ブロガーというと、
日本では池田信夫のブログが有名ですが、私はほとんど読みません。
彼の高揚した書き方が私に馴染まないからです。それに代えて、
実名はわからないのですが、金融、特にファイナンスの素養が
高い「himaginaryの日記」はだいたい読みます。
http://d.hatena.ne.jp/himaginary/

是非ともご自分の好きな英語ブロガーを作って、その方々をブログを
RSSリーダーで設定して、自分で独自の情報網をつくってください。
前回申し上げたように、RSSリーダーの代表例としては、
Googlegmailを設定すると左上に「リーダー」が出てきますので
ここで設定すればよいということになります。なぜ、toyonetを
持っているのにgmailを設定したほうがいいかというと、toyonetは
卒業すると打ち切られるからです。メールアドレスは、自分の半永久的な
住所のようなものですから、ご自分のアドレスは確保したほうがいいわけです。
(私のniftyのメールアドレスは1985年から持ってます、ハハハ)

それでは、有名経済ブロガーを三人ほど紹介しましょう。
これらはみな私の「リーダー」に入ってます。
一人は、タイラー・コーエンです。彼は村上春樹の小説も読む、
極めて守備範囲の広いミクロの経済学者で、Marginal Revolutionという
ブログをアレックス・タバロック氏と共に書いています。
http://www.marginalrevolution.com/

彼の最近の『欧米知識人とカダフィ』というブログ・ポストは興味深いものでした。
http://www.marginalrevolution.com/marginalrevolution/2011/02/western-intellectuals-and-gadhafi.html
ロバート・パットナム先生が招かれてカダフィ大佐と会ったことがあるとのことです。

このロバート・パットナムという政治学の先生が昔書いた
『Making Democracy Work』、つまり「民主主義をうまく動かす」という
本(邦訳はなぜか『哲学する民主主義』という変な題です)は、今でも
民主主義の基盤を考える上で大事な本だと思います。
「社会(関係)資本」という概念を広めた本でもあります。

英語表現では、make A workという表現は、get B rightという
表現とともに覚えておきましょう。前者は、「Aをうまく動かす」と
言う意味、後者は「Bを正しくする」という意味です。後者の例は、
get price right「価格を正しいものとする」という言い方があります。
外部性もないのに、税金とか補助金をかけて価格に歪みを
もたせているのをやめることを指します。

次のブロガーは、グレゴリー・マンキューです。彼は共和党系の経済学者として
知られていて、G.W. Bush政権のCEA委員長を務めました。
私のミクロの教科書でご存じだと思います。この人の専門は、
マクロ経済学で、彼の書いた中級のマクロ経済学の教科書はとても有名です。
http://gregmankiw.blogspot.com/

彼がハーバード大学の1・2年に教えている経済学原理の教科書の半分が
我々が使っているミクロ経済学の教科書であり、私が授業で申し上げる
世界のどこでもこの教科書を使っているという実例になっています。
マンキューは共和党系の経済学者なので、しばしば民主党系の
クルーグマンとブログで噛みつきあいます。それを最初に上げた日本の
経済ブロガーであるhimaginary氏がコント調に仕上げています。
例えば、これです。
http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20100509/paul_and_greg_2010_5

マンキューの最近のブログでは、大学生による経済シンポジウムの
紹介が出ています。
http://gregmankiw.blogspot.com/2011/02/econ-conference-for-undergrads.html
http://carrollround.georgetown.edu/
彼が言うように、経済学の先生のシンポジウムは五万とありますが、
大学生のシンポジウムは珍しいです。

今日ご紹介する最後のブロガーは、ブラッドフォード・デ=ロングです。
かれは西海岸のUC Berkeleyのマクロ経済学・経済史の先生で、
歴史を良く知っているので、とても勉強になるブログです。
http://delong.typepad.com/sdj/
彼は民主党系の経済学者で、ポール・クルーグマンと立場が似ています。
私が最初に読み始めた経済ブログはデ=ロングだったと思います。
彼は書く量が膨大なので、今は9割ぐらいは読まずに、時々見るだけです。

最近ほとんど流し読みだったデ=ロングのポストで目に留まったのは
『都市建築と革命(Urban Architecture and Revolution)』というものでした。
http://delong.typepad.com/sdj/2011/02/urban-architecture-and-revolution.html
大学の同僚が、カイロの民衆蜂起・政権転覆の根城となったタハリール広場
ついて詳しいというのです。彼がリンクをはっている同僚のインタビューがこれです。
http://www.dwell.com/articles/design-and-history-of-tahrir-square.html

このインタビューはとても面白かったです。たとえば、ムバラク政権崩壊後、デモ隊たちが
広場を掃除したことが興味ぶかかったのですが、この先生も、こんなことは
初めてだと驚いてます。これも以前に申し上げた中産階級の蜂起だという
私の勝手な根拠なのです(公共の場の掃除は、景観外部性の内部化です
が、こんなことをするのは中産階級の証拠です)。

ということで、タハリール(解放)広場の話もしたので、残る話は一つです。
中国政府の第12次5カ年計画です。5カ年計画とは何かというと
Wikipediaで概観をつかんでください。
http://en.wikipedia.org/wiki/Five-Year_Plans_of_the_People%27s_Republic_of_China
今回の5カ年計画は、主席(大統領)の交代を控えていること、経済の方向性の
転換が予想されていること、世界経済の中での中国の位置が非常に重くなって
きたことももあって、注目されています。注目点は、これまでのような輸出中心の
経済発展戦略を続けるか、そして、経済が大きくなってきた今、目標の経済成長率を何%
ぐらいにおくかです。

日経でも2月27日朝刊に呉暁華のコメントを載せています。
28日にも記事がありました。
Project Syndicateでは、Stephen Roach氏のop-edを
載せています。彼はかなり楽観的です。Roach氏は長年
米国経済について弱気派として知られていたので、最近の
中国経済についての強気発言は非常に目立ちます。
http://www.project-syndicate.org/commentary/roach2/English
これにはpodcastもあります。
http://media.blubrry.com/ps/media.libsyn.com/media/ps/roach2.mp3

もう一つ、中国経済に関連してMichel Pettisのブログも紹介しましょう。
http://mpettis.com/2011/02/zaiteku-and-china%e2%80%99s-january-inflation/
彼は、証券会社の調査部門に元々勤めていて、今は北京(だっかかな?)で
金融の先生をしています。そういう意味では、理論・理論の人ではありません。

でも、面白い論点を出してくれるのでためになります。たとえば、上記のポストでは
現在、中国の企業預金が低下しているという事実が目を引きます。中国の銀行金利
低く、インフレ率が高いことを前提とすると、企業は貯蓄(=儲け)を銀行に預けず、
他の企業に貸し付けているのではないかというのが推測できます。
その構造は、日本の80年代の財テクに似ているというペティス氏の指摘も
もっともです。財テクバブル崩壊とともに崩れました。
中国の資金は不動産バブルを引き起こしていないでしょうか。

私の勝手な読みでは、中国は第12次5カ年計画で、
日本の「日本列島改造論」と「前川レポート」の課題を
同時に達成しようとしていると思います。この二つを知らなかったら
Wikipediaなどで簡単に見ておいてください。おじさんの常識です。

この課題をバブル崩壊なしに成し遂げるかが次の主席(大統領)の使命でしょう。
そうやって論点を自分で設定しておくと、ニュースがより面白くなるので
ないでしょうか。ではでは。

久松